太陽光発電をつけるならV2Hと蓄電池のどちらを選ぶ?おすすめの選び方と違いを解説
マイホームの庭で電気自動車の充電

家づくりコラム

太陽光発電をつけるならV2Hと蓄電池のどちらを選ぶ?おすすめの選び方と違いを解説

マイホームの庭で電気自動車の充電

注文住宅に太陽光発電を取りつける方が増え、V2Hと蓄電池にも注目が集まっています。V2Hは電気自動車を所有していれば、蓄電池よりも大容量の電力を自宅で使えて便利です。

この記事では、太陽光発電にV2Hと蓄電池のどちらを組み合わせるか迷っている方に向けて、それぞれの特徴や違いをわかりやすく解説します。併用するメリット・デメリットについても紹介するので、どちらも導入したいと考えている方も参考にお読みください。

V2Hと蓄電池の違い

屋上に太陽光パネルを備えた住宅の模型

V2Hと蓄電池の働きに大きな違いはなく、どちらも家庭に電力を供給できる装置です。V2Hは電気自動車からの供給となるため、どなたにもおすすめできる装置ではありません。ただし、蓄電池とは違う魅力があるので、現時点で所有していない方も今後の参考に違いを知っておくのがおすすめです。

V2Hとは?

V2Hは、「Vehicle to Home」の略語で、「車から家へ」を意味します。通常、電気自動車のバッテリーは家庭へ供給できない仕組みです。ところが、V2Hを設置すると車のバッテリーが家庭へ供給できるようになります。家庭内でエネルギーの循環が簡単におこなえると、省エネ意識の高い人たちに人気です。

電気自動車のバッテリーは大容量で、1回の充電で約500〜600km走行できます。家庭用蓄電池と比べると数倍以上の容量となるため、V2Hを介して家庭内の電源として使用する価値は十分です。

蓄電池とは?

家庭用蓄電池は、二次電池の1種です。モバイルバッテリーと同様の仕組みで、蓄電池を充電することで電力が供給できるようになります。充電方法は、電力会社から電気を購入する方法と、太陽光発電でつくった電気を貯めておく方法の2種類です。

太陽光発電を通じて充電をおこなえば、災害時でも電力不足になりません。日本は自然災害が多い国なので、防災意識が高い人は蓄電池を選ぶ傾向があります。災害時以外でも、蓄電池があれば夜間や悪天候の日でも電気が供給できるのもメリットです。

V2Hと蓄電池の違いを4つのポイントで解説

電気のスイッチを指さす親子

V2Hと蓄電池は共通の働きがあるものの、仕様や目的は異なります。電気自動車や太陽光発電の有無によっても省エネや節約の度合いは変わるので、ここでは所有しているのを前提に解説しましょう。

日常的な使い勝手

V2Hも蓄電池も操作性は良く、設置してしまえば面倒な手間はありません。ただし、V2Hは自宅に車がない状態では稼働できないのが課題です。日中であれば太陽光発電で電気を生成できるものの、夜間や雨の日は困ってしまいます。

一方、蓄電池は据え置き型なので家族のスケジュールに影響を受けずに便利です。電力会社から買電せずに、自宅で電力を賄いたい場合は蓄電池のほうが適しています。

電力供給の容量

V2Hも蓄電池も充電できる容量に差があり、家庭に供給できる電力量は同じではありません。一般的に電気自動車のバッテリーは40〜60kWh、大型車となると100kWhを超える容量になります。一方、家庭用蓄電池の容量は、3〜15kWhです。

ただし、4人家族の1日の電力消費量は13kWhとされています。家庭用蓄電池でも1日程度であれば、いつも通りの生活が可能です。

導入費用

太陽光発電だけでなく、V2Hや蓄電池の導入もそれなりに高額な費用を必要とします。どちらも種類によるものの、V2Hの目安としては本体と工事費を合わせて130万円程度です。蓄電池は、1kWhあたりの相場価格を18.7万円とすると、容量10kWhで187万円となります。

数字だけを見るとV2Hのほうが初期費用は安くなりますが、販売店や製品によって価格が大幅に変わるため一概には断言できません。
(参考:経済産業省「定置用蓄電システムの目標価格および導入見通しの検討」)

補助金サポート

日本政府はカーボンニュートラルの実現に向けて、再生エネルギーの普及を推奨しています。そのため、太陽光発電住宅を建てるための補助金制度をさまざま展開してきました。最近では、V2Hや蓄電池との組み合わせを推進し、導入を決めた人に国や自治体から補助金が出るケースも増えています。

補助金制度は募集開始後、予算に達した時点で受付停止となってしまうのが一般的な流れです。そのため、申請のタイミングや最新情報をご自身で調べる必要があります。リサーチがむずかしい場合は、住宅会社や工務店に問い合わせてみましょう。

補助金の例

一例として、2023年に受付していた補助金制度を紹介します。

・【令和5年度】戸建住宅におけるV2H普及促進事業

東京都の補助金制度で、V2Hを導入する人に対して、費用の一部が助成されます。二酸化炭素の排出を減らすため、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の普及を推進するのが目的です。

上限を50万円として、対象製品の1/2の金額を助成してもらえます。
(出典:クール・ネット東京「【令和5年度】戸建住宅におけるV2H普及促進事業災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」)

・次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業

国の補助金制度で、省エネ住宅はZEH+(ゼッチプラス)よりも進んだ「次世代ZEH+」を対象としています。条件の中には、蓄電システムの導入が含まれているのもポイントです。

対象の蓄電池に対して、2万円/kWhの補助金(補助対象経費の1/3、または20万円のいずれか低い額)が支給されます。
(参考:一般社団法人 環境共創イニシアチブ 「令和5年度 経済産業省及び環境省による戸建ZEH補助事業」)

【関連記事】
【2023年】新築住宅に太陽光発電や蓄電池の補助金はもらえる?金額や申請過程を解説

V2Hと蓄電池のどちらを選ぶかを決めるポイント

V2Hと蓄電池の説明を聞く家族

注文住宅の太陽光発電にV2Hと蓄電池のどちらを組み合わせるかは個人の判断によります。どちらを選んでも太陽光発電を単体でつけるよりは省エネにつながり、毎月の電気代も節約可能です。V2Hと蓄電池のおすすめポイントをまとめましたので、ご自身のライフスタイルと照らし合わせてみましょう。

V2Hのおすすめポイント

V2Hの最大のおすすめポイントは、容量の大きさです。電気自動車のバッテリーが満タンだった場合、家庭用蓄電池の4〜6倍以上になります。通常であれば、それほどの電力を蓄えておく必要はないでしょう。しかし、災害時には電力が非常に貴重になります。

地震や台風で自宅避難をする場合、数日間停電してしまうと何もできません。V2Hがあれば、4〜5日間分の電力を家庭に供給できるので安心です。小さなお子さんや高齢者のいるご家庭では、いざというときのための備えが大変役に立ちます。

蓄電池のおすすめポイント

蓄電池の最大のおすすめポイントは、いつでも家庭内に電力供給ができる点です。V2Hは電気自動車がないと稼働できないのに対して、蓄電池はいつでも利用できます。家族が自動車通勤をしていたり、長期的に出かけたりしてしまうと好きなタイミングで電力供給できません。

太陽光発電で電気を生成している家庭の場合、蓄電池を使うのは緊急度が高いシチュエーションです。そのため、いつでも家庭内に電力を供給できるという状況は安心につながります。

V2Hと蓄電池をおすすめする人の比較

V2Hと蓄電池のおすすめポイントを踏まえて、具体的にはどのようなライフスタイルの人に向いているのかを見てみましょう。

V2Hがおすすめの人蓄電池がおすすめの人
・車に乗るのは近所への買い物程度
・家族の送迎など短時間しか乗らない
・車を使うのは週末のみ
・充電スピードを上げたい
・大規模な停電に備えたい
・車で通勤している
・自宅に車のない時間が長い
・太陽光発電との連携を重視したい
・安定した電力供給を希望
・大容量の電力供給を必要としない

上記は一例に過ぎず、ご自身のライフスタイルだけでなくご家族の意見も大切です。電気は日常生活に欠かせないものなので、できるだけ安心して使える環境をおすすめします。また、電気代の支払いも家計に直結するため、自家発電と自家消費をスムーズにおこなう仕組みも大切です。

電気自動車を所有していない方は、蓄電池で電気を貯めておける便利さを体験してみるのもいいでしょう。

​V2Hと蓄電池を注文住宅で併用するメリット・デメリット

省エネハウスで暮らす家族の食卓

V2Hと蓄電池の違いを紹介してきましたが、2つを同時に使用することも可能です。太陽光発電もあるご家庭の場合、V2Hと蓄電池が揃うと電力の自給自足が叶いやすくなります。再生可能エネルギーは環境にもやさしく、災害時にも安心な仕組みです。併用するメリットとデメリットについて学び、住宅への導入を検討してみましょう。

V2Hと蓄電池を併用するメリット

注文住宅でV2Hと蓄電池の併用で得られるメリットは主に3つです。

蓄電池2台分の電力を使い分けられる

V2Hと蓄電池を導入すると、実質蓄電池が2台ある生活になります。たとえば、家族が電気自動車を使って長期出張に出かけてしまっても、蓄電池があるので電力不足には陥りません。また、災害が起きて大規模停電になってしまっても、V2Hがあれば大容量の電力を確保可能です。

普段の生活で両方を必要とするシチュエーションは多くないものの、どちらかがないと困る機会は少なくありません。家族の人数が多い場合、互いのスケジュールのすれ違いがストレスになってしまうのも防げます。

非常時でも余裕を持って電気を利用できる

日本は自然災害が多く、地震に限ってはどこで起こっても不思議ではありません。そのため、住宅を建てる場所に関わらず、災害への備えは不可欠です。中でも、電力は日常生活に欠かせないため非常用の電源は複数用意しておくと慌てずに済みます。

太陽光発電があれば、停電時でも自立運転モードによって1,500W程度の電力が使用可能です。ただし、夜間や悪天候時には発電できないため、状況によっては蓄電池だけでは足りなくなってしまいます。電気自動車のバッテリーは容量が大きく、V2Hがあれば洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなども稼働できて便利です。

電気代を節約できる

太陽光発電は、蓄電池がないと家庭内に貯めておけません。せっかく発電しても夜間に使えず、電力会社から買う必要があります。出費を抑える意味でも蓄電池があれば、自家生成した電気を無駄なく使えて経済的です。

電気自動車の充電に関しても、太陽光発電があれば機種によってはV2Hを通じて充電ができます。晴れた日におこなえば、売電の必要なく家庭内で生成した電気を循環させられてお得です。

V2Hと蓄電池を併用するデメリット

V2Hと蓄電池の併用は魅力的なメリットだけでなく、注意が必要なデメリットもあります。

初期費用が高い

太陽光発電と同じく、V2Hと蓄電池の導入には初期費用がかかります。金額の目安としては、約200万〜400万円となります。長期的に見るとコストパフォーマンスは悪くないものの、住宅購入時に用意する額としては決して安くはありません。

住宅ローンの支払いや毎月の生活費、将来に向けての出費を計算したうえで判断しても遅くはありません。導入費用を抑える方法として、補助金制度の活用もあります。制度によっては対象製品が決まっていたり、住宅の性能に条件があったりするので、お近くの工務店に相談してみるのも1つの方法です。

電気自動車の劣化が早まる可能性がある

電気自動車に限らず、充電バッテリーは充電回数を重ねるごとに徐々に劣化していきます。そのため、家庭内への電力供給をおこなう頻度が高ければ、充電の回数が増えるのが課題です。

電気自動車を駆動させるリチウムイオン電池の寿命は、一般的に「8年または走行距離16万km」が目安とされています。できるだけ充電のサイクルを抑えつつも、定期的なメンテナンスをして長持ちさせることが重要です。

設置スペースに注意が必要

V2Hと蓄電池は家の外に装置をおくためのスペースが必要なため、事前に確保しておく必要があります。蓄電池は室内に置けるタイプもありますが、V2Hは屋外への設置が基本です。車の充電を考えるとカースペースの近くが望ましく、自宅の分電盤から50m以に推奨されています。メンテナンスを考えると、周囲にはものがない状態が理想です。

注文住宅にV2Hと蓄電池を導入する際は、それぞれの設置場所について慎重に検討しましょう。設計時に予定しておけば、無理のない配置で快適に使用できます。

まとめ

注文住宅を建てる際は太陽光発電だけでなく、V2Hと蓄電池の導入も検討ポイントです。どちらか一方の設置でも、災害時や光熱費削減に役立ちます。電気自動車を所有していない方は、蓄電池で試してみるのがおすすめです。

V2Hと蓄電池は併用もできるので、電力を完全に自給自足したい、災害時に安心して暮らしたいという方は前向きに考えてみてはいかがでしょうか。設置場所には注意が必要なものの、ハウスメーカーや工務店の担当者に相談するとアドバイスしてもらえます。

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