屋根の形状7つの特徴とメリット・デメリットを知ってから住宅デザインを決めよう
注文住宅の外壁と同じように、屋根の形状にもさまざまな種類があります。外観の見た目を左右するだけでなく、雨漏りのリスクやメンテナンスの頻度にも影響を与える部分です。
この記事では、一戸建て住宅の主な屋根の特徴とメリット・デメリットを紹介します。デザインと機能性を兼ね備えた屋根で理想の住まいを実現させたい方は、ぜひ参考にしてください。
屋根の役割とは?
屋根の形状を選ぶ前に、屋根の役割について理解しておく必要があります。住宅には屋根があって当たり前と感じているかもしれませんが、種類によっては家の間取りが変わる可能性もあるほど重要なパーツです。
屋根は外装の一部ではなく、「雨風や災害から住民を守りつつ、建物の外壁を保護する」という重要な役割を果たしています。もう少し細かく分解すると、以下の3つの要素が不可欠です。
- 防水性:雨や雪などの浸水を防ぎ、建物内部が濡れないように守る
- 断熱性:夏は室温の上昇を抑え、冬は室内の暖かい空気を逃がさずに快適な暮らしを実現
- 防音性:外部の騒音を遮断し、同時に住宅内からの音が外に漏れないようにする
3つの機能は、どの形状の屋根であっても共通しています。地域の気候や住宅周辺の環境を参考に、適したグレードを選ぶのがおすすめです。
7つの屋根の形状とメリット・デメリット
一戸建て住宅の屋根の形状には、さまざまな種類があります。注文住宅の場合、どの屋根を採用するかもご自身で選択可能です。新築住宅で多く採用される屋根の形状7種類とメリット・デメリットについて解説しましょう。
切妻(きりづま)
切妻屋根は、棟から両側に傾斜している形状です。シンプルな山形で、左右で勾配が異なるバリエーションも存在します。
メリット1:太陽光パネルを設置しやすい
切妻屋根は2枚の板で屋根を覆うため、平面のスペースが広いというのが特徴です。太陽光パネルを取り付けやすく、大量の発電を希望する場合にも適しています。
メリット2:さまざまな外観に適応
シンプルで飾り気がないため、さまざまなデザインの注文住宅に合う形状です。洋風・和風・モダン・プロバンス風など多彩なテーマになじむので、センスに自信がない方も安心して選べます。
デメリット1:破風板(はふいた)の劣化が早い
破風板とは、切妻屋根の縁についている板の部分です。雨風や太陽光に直接さらされる部分のため、色あせや劣化が生じやすいという難点があります。
デメリット2:オリジナリティに欠ける
シンプルな形状のため、個性的なデザインを好む方にとっては面白みに欠けるかもしれません。住宅街で屋根を目立たせたい場合は、別のデザインが適しています。
寄棟(よりむね)
寄棟屋根は、4方向に傾斜する4つの面から構成される形状です。横から見ると、長いほうが台形に、短いほうが三角形に見えます。
メリット1:強風に強い
四方向すべての屋根が傾斜しているため、強風を受け流しやすいのが特徴です。屋根にかかる負荷が軽減され、耐久性が向上します。
メリット2:定番のデザイン
寄棟屋根は定番の形状で、多くの住宅で見られるデザインです。将来的に引越しや売却を考えている場合は、借り手や買い手がつきやすいという安心感があります。
デメリット1:太陽光パネルの設置面積が制限される
寄棟屋根は凹凸が多いため、屋根の平面積は狭くなるのが難点です。太陽光パネルを設置できる面積が制限され、発電量が制約される可能性もあります。
デメリット2:つなぎ目に水が溜まりやすい
屋根と屋根のつなぎ目部分、通称「谷」は雨水が溜まりやすく経年劣化によりサビが発生しやすい箇所です。ゴミや落ち葉も溜まりやすいため、定期的な清掃が不可欠です。
片流れ
片流れ屋根は、片側一方向にのみ勾配がある形状です。シンプルな見た目が特徴で、比較的小規模な建物に採用されます。
メリット1:大型の太陽光パネルを設置できる
屋根の平面を広く取れるデザインのため、大型の太陽光パネルを載せられます。注文住宅に太陽光発電システムを導入し、自宅の電気を自給自足したい方におすすめです。
メリット2:屋根裏部屋を広くできる
片流れ屋根は頂点が高い位置にあり、屋根裏の空間を広く取りやすい形状です。広い屋根裏は、子ども部屋や収納スペースとして活用できます。
デメリット1:雨漏りのリスクが存在
片流れ屋根は一枚屋根なので、棟からの雨漏りが起こりやすいというのが課題です。防水性の高い建材を使用したり、定期的な点検をしたりと対策を講じましょう。
デメリット2:換気の不足
片流れ屋根は幅が広くて風通しが悪いため、湿気が屋根裏に溜まりやすい構造です。湿気による建物の劣化を防ぐためにも、実績のある工務店を選ぶ必要があります。
陸(ろく)
陸屋根は「平屋根」とも呼ばれ、傾斜のない平らな形状です。主にビルやマンションで採用されているものの、注文住宅の屋根としても人気があります。
メリット1:屋上を活用できる
陸屋根に続く階段を設ければ、屋上としても利用可能です。洗濯物を干すだけでなく、くつろぎスペースやガーデニングなど使い道は多岐にわたります。
メリット2:落雪のリスクが低減
屋根に傾斜がないため、雪が屋根に積もっても落下の心配がありません。雪の多い地域でもカーポートの損傷や近隣への迷惑を予防できます。
デメリット1:雨水が溜まりやすい形状
陸屋根は周囲に立ち上がりがあり、雨水が溜まりやすい形状です。排水溝があるものの、ゴミや葉っぱが詰まると雨漏りのリスクが高まるので注意しましょう。
デメリット2:こまめなメンテナンスが必要
陸屋根は特殊な塗料やシートで防水処理されており、約10年ごとに劣化の可能性があります。定期的な塗り直しが必要で、排水溝の詰まりを防ぐためにも定期的な点検が欠かせません。
差し掛け
差し掛け屋根は、母屋の屋根より一段下げた位置に取り付けられた片屋根です。2階建て住宅の場合は通常1階部分の屋根を指し、「下屋根(げやね)」や「さしかね屋根」とも呼ばれています。
メリット1:控えめながらも個性的
個性的でありながらも派手すぎないデザインが特徴で、程よいアクセントが人気の秘密です。落ち着いた雰囲気を漂わせながらも、オリジナリティを演出したいと考える方に向いています。
メリット2:広くて明るい屋根裏を実現
差し掛け屋根は屋根の高低差があり、広々とした屋根裏空間を確保できる形状です。屋根の段差部分に窓を設ければ、自然光の入る明るい屋根裏を実現可能です。
デメリット1:定期的な防水点検が必要
屋根と外壁の接合部に板金が施工されるため、経年劣化により錆びて穴が開いてしまう可能性もあります。雨水の侵入を防ぐためにも、定期的な屋根の防水点検が必要です。
デメリット2:バランスをとるのがむずかしい
差し掛け屋根は非対称で段差のあるデザインが、アンバランスに感じられる場合もあります。見た目に違和感なく設計するためには、プロの力が必要です。
入母屋(いりもや)
入母屋屋根は、歴史ある日本家屋や神社建築にも見られる重厚感がある形状です。「切妻屋根」と「寄棟屋根」が融合したデザインで、棟に平行した側面の「平側」が切妻屋根、横から見て三角になっている「妻側」には寄棟屋根となります。
メリット1:外観の美しさ
入母屋屋根の日本の風土に調和する形状が、古くから愛されている最大の要因です。ガルバリウム鋼板を使用すればコストが抑えられるので、注文住宅にも採用しやすくなります。
メリット2:雨風にも強くて頑丈
入母屋屋根は丈夫な構造をしているため、雨や風に対しても高い耐久性を発揮します。雨風による住宅の劣化を防ぎ、台風からも住宅をしっかりと保護できるのが強みです。
デメリット1:設計と施工には高度な技術が必要
入母屋屋根は複雑な形状を持ち、接合部が多い構造となっています。接合部が多いと雨漏りのリスクも高まり、設計と施工には高度な技術が必要です。
デメリット2:屋根の重量が耐震性に影響
入母屋屋根は頑丈なだけに相当な重さがあり、住宅に揺れが大きく伝わってしまうという難点があります。耐震性に影響を及ぼさないよう、軽量な鋼板(こうはん)を使用するなどの対策が必要です。
大(おお)
大屋根は1つの屋根を1階から2階にわたらせた形状で、面積の広さとダイナミックな傾斜に特徴があります。公共施設でも多く採用され、JR高知駅や大阪駅でも見られるデザインです。
メリット1:小屋裏空間を有効活用できる
大屋根は屋根と天井の間に広々としたスペースができるため、「小屋裏」を有効活用できます。下の部屋の天井を取り払ってしまえば、開放感あふれる部屋として変化させることも可能です。
メリット2:さまざまなデザインに適している
大屋根は和風だけでなく、洋風デザインの家の外観にも違和感なく調和します。堂々とした印象を与えるデザインのため、注文住宅の屋根にインパクトを出したい方にも人気です。
デメリット1:落雪に注意
大屋根の部分に雪が積もると、一度に多量に落ちてくる危険性があります。落雪は思わぬ事故につながる危険性があるため、安全対策として敷地の確保が必要です。
デメリット2:天井に勾配が生じる
大屋根の家では、屋根に沿て天井が傾斜した造りとなります。傾斜によって、日常生活に支障が出ないよう設計を慎重におこないましょう。どうしても違和感を拭えない場合は、天井面全体が水平の「平天井」も選べます。
屋根の形状を選ぶ際の注意点
注文住宅の屋根を選ぶにあたって、注意したいポイントは形状だけではありません。屋根は毎日の生活や、新居での暮らしやすさにも大きくかかわる部分です。入居後に後悔しないためにも、以下の3点に留意しましょう。
周囲の環境を考慮
一戸建て住宅の外観は、街の景観にも影響を与えます。法的な規制がなければ自由に設計可能なものの、あまりにも突飛なデザインだと周囲から浮いてしまうので注意が必要です。屋根の印象は、主に以下の要素で決まります。
- 形
- 色
- 屋根材
- 勾配の角度
- 軒(のき)の大きさ
- 庇(ひさし)の有無
好みであっても、街並みに合わないデザインは避けたほうが無難です。とくに住宅地では、近隣の住宅とのバランスはご近所づきあいにも関係します。
地域の気候を把握
屋根は自然災害から身を守るためにも重要な部分なので、建築予定地の気候や風土は重要です。台風が多い地域であれば雨風に強い屋根を、地震が発生しやすい地域であれば耐震性を重視して選ぶ必要があります。デザインを中心に考えてしまった結果、生活には相応しくなかったと後悔しないよう地元に詳しい工務店に相談するのがおすすめです。
修理やメンテナンス頻度を確認
注文住宅は長く暮らすのが前提のため、経年劣化による修理や定期メンテナンスについても事前に検討します。屋根の修理で多いのは、雨水による雨漏りです。設計段階で雨漏りのリスクが少ないデザインを選んだり、防水性の高い屋根材を選んだりしましょう。一般的にシンプルな形状のほうが長持ちし、メンテナンスも手軽な傾向があります。
太陽光発電パネルの検討と同時並行させる
省エネ住宅が推奨されるようになり、注文住宅に太陽光発電システムを導入するケースは増加傾向です。太陽光パネルは、屋根の形状や勾配、材質、方位によって設置枚数や条件が変わってきます。また、太陽光発電のシミュレーションには、屋根に関する情報が必要な場合もあります。スムーズに打合せを進めるためにも、同時に検討するのがおすすめです。
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まとめ
注文住宅の屋根は、シンプルなデザインから複雑な形状まで豊富な選択肢があります。その中から7つの代表的な形状について特徴やメリット・デメリットを解説しました。お住まいの地域や環境によって、最適な屋根の形状は異なるので注意が必要です。地元密着型の工務店に相談し、デザインと機能面から総合的なアドバイスをもらいましょう。安心安全で、理想的な家づくりが叶います。