断熱性能等級とは?2022年に新設された等級5についても解説
断熱性能等級とは?2022年に新設された等級5についても解説

家づくりコラム

断熱性能等級とは?2022年に新設された「等級5」についても解説

断熱性能等級とは?2022年に新設された等級5についても解説

四季がはっきりとしている日本では、高温多湿の夏と乾燥し底冷えする冬の寒さという両極端な季節が繰り返され、日本の住宅は厳しい外気温の変化にさらされます。
そんな日本の住宅において断熱性・省エネの指標である「断熱性能等級」が重要なことをご存じの方も多いと思います。ですが、これからご自身で建てる家にどの程度の断熱性能等級を検討したらいいか迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さらに2022年は、新たな断熱性能等級として4月に「等級5」、10月に「等級6」「等級7」が新設されました。等級が増えた分、選択にお悩みの方も多いと思います。

そこで今回は、2022年に改訂された最新の断熱性能等級の詳細をはじめ、断熱等級を評価する数値、断熱性能等級による税制優遇、断熱性能等級を上げるポイントについて解説していきます。

断熱性能等級とは?

断熱性能等級とは「住宅性能表示制度」の中で、建物の断熱性能と省エネ性能をランク付けするものです。

住宅性能評価制度について

2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され、その中の大きな柱として「住宅性能表示制度」が設けられました。
住宅性能表示制度は、住宅の建物性能を第三者機関が客観的にランク付けして認証するものです。新築住宅の場合の評価対象項目は10分野32項目に渡ります。

参照:国土交通省住宅局住宅生産課「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」

断熱性能等級の位置づけ

建物の断熱性能と省エネルギー性能を評価する項目が断熱性能等級で、住宅性能表示制度の中で「⑤温熱環境に関すること」に該当します。
断熱性能等級は、健康な生活を維持するために室内の温度を適切にコントロールしつつ、できる限りエネルギーの使用量を削減するための住宅性能を評価します。

制度設計の当初から設定されている断熱等性能等級は1から4までです。
(現在は等級7までありますが、それについては後述します)
等級が高くなるほど、より断熱性能が高く、エネルギー効率の良い住宅となっていることを表しています。等級と同時に表示される「地域区分」は、全国を気候条件の違いに応じてⅠ~Ⅷの8つの地域に分けています。

【断熱等性能等級と評価基準(住宅性能評価)】

断熱等性能等級評価基準(住宅性能評価)
等級4エネルギーの大きな削減のための対策(「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」の規定による建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準に相当する程度)が講じられている
平成28年に制定された基準(通称「次世代省エネ基準(28年基準)」)に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅
等級3エネルギーの一定程度の削減のための対策が講じられている
平成4年に制定された基準(通称「新省エネ基準(4年基準)」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
等級2エネルギーの小さな削減のための対策が講じられている
昭和55 年に制定された基準(通称「旧省エネ基準(55年基準)」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
等級1その他(断熱に関する特別な対策や配慮なし)

断熱性能等級とUA値・ηAC値

断熱性能等級は、地域区分ごとに定められたUA値(ユーエー値:外皮平均熱貫流率)とηAC値 (イータエーシー値:平均日射熱取得率)によって評価されます。

UA値とは

UA値は室内の熱が屋外にどれだけ逃げてしまうかを表す数値です。建物表面積(外気に接する部分すべて)1㎡あたりの家全体から逃げる熱量(換気による熱損失を考慮しない)によって数値化されます。
UA値が低いほど住宅の熱損失が少ない(≒気密断熱性能が良い)ことになります。地域にもよりますが、三大都市圏が該当する地域区分Ⅴ・Ⅵにおいての新築住宅の目安は、少なくともUA値0.87以下であり、高気密・高断熱住宅としては0.46以下が望ましいでしょう。検討中の住宅のUA値については、ハウスメーカーや工務店に正確な数値を確認するようにしましょう。

ηAC値 とは

ηAC値は太陽の熱がどれだけ室内に伝わるかを表す数値です。数値は日射強度あたりの屋根・壁・開口部から侵入する熱量の合計を建物表面積で割ることにより算出します。
夏の冷房空調負荷を算定するときに用い、この数値が低いほど真夏の日射の影響を受けにくく、冷房にかかるエネルギーが少なく済む住宅であると言えます。

断熱性能等級の最新動向について

断熱性能等級の最新動向について

住宅の断熱性能の向上により石油や石炭、ガスなどの化石燃料により生み出されるエネルギーの使用を抑制することは、地球温暖化の原因といわれる温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量の削減を図る観点からも、今後のカーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な指標となっています。
それを踏まえて、住宅の断熱強化・省エネルギー化が急務となっており、各種の法改正が急ピッチで進められています。

2021年4月の省エネ法改正

2017年4月に施行された「建築物エネルギー消費性能向上に関する法律(建築物省エネ法)」により、「省エネ説明義務制度」の規定が定められました。
これは、省エネルギー適合性判定(省エネ適判)の対象建築物(※1)でなくても省エネ性能を建築士から施主に説明することを義務付けるものです。省エネ性能の説明には、住宅性能評価制度の省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)での等級によるランクが用いられます。
(※1)省エネ適判の対象となる建築物を「特定建築物」と言い、その定義は下記のとおりです。

(※2) 2021年4月から省エネ基準適合義務の対象範囲が拡大され、床面積の下限が「2,000㎡」から「300㎡」に引き下げられています。
(経過措置として2021年3月31日までに届出または確認申請を受付している場合は適判対象外)

2025年にはすべての建物の次世代省エネ基準適合が義務化

さらに、政府方針で「2025年度以降新築する全建築物に省エネ基準への適合を義務付けること」が発表されています。これにより、一般住宅も含めて全ての建築物で省エネ適判が必要となります。
ここで言う省エネ基準は「次世代省エネ基準」のことを指します。つまり、2025年以降に新築や増改築をする全ての建物は、原則として断熱性能等級4以上の性能があることを義務付けるもので、非常に大きな意味を持ちます。

2022年4月より断熱性能「等級5」、10月より断熱性能「等級6」「等級7」が新設

断熱等級は従来の最高等級4を超える「等級5」が2022年4月より制定されました。
さらに、2022年10月からは「等級6」「等級7」も導入され、さらなる省エネ性能の向上が促進されています。

【新たな断熱性能等級と基準】

断熱性能等級基準
等級5ZEH強化外皮基準に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅
等級6暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率が概ね30%(HEAT20 G3相当)
等級7暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率が概ね40%(HEAT20 G2相当)

HEAT20とは

「HEAT20」とは、住宅等の温熱環境・エネルギー性能の設計や施工技術に関する調査研究と技術開発を目的に2020年に設立された「一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のことです。
戸建住宅の高断熱化の推進・普及のため、「HEAT20 G1~G3」の三段階の水準を策定し、G2は断熱性能等級6、G3は断熱性能等級7の基準値として採用されています。

参考:一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 HEAT20 住宅水準「住宅システム認証」

【2022年最新版】断熱性能等級と地域別UA値

2022年10月時点での断熱性能等級の最新設定を、下記の表にまとめてみましたので参考にしてください。

地域区分
主な該当都道府県北海道(北部)北海道(南部)青森県・岩手県宮城県・新潟県東京都・愛知県兵庫県・福岡県宮崎県・鹿児島県沖縄県
等級7HEAT20 G3相当UA値0.200.200.200.230.260.260.26
ηAC値3.002.802.706.7
等級6HEAT20 G2相当UA値0.280.280.280.340.460.460.46
ηAC値3.002.802.705.1
等級5ZEH基準UA値0.400.400.500.600.600.600.60
ηAC値3.002.802.706.7
等級4次世代省エネ基準UA値0.460.460.560.750.870.870.87
ηAC値3.002.802.706.7
等級3新省エネ基準UA値0.540.541.041.251.541.541.81
ηAC値4.003.804.00
等級2旧省エネ基準UA値0.720.721.211.471.671.672.35
等級1

参照:国土交通省資料「住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について」

断熱性能等級と各種認定住宅制度との関連

ここからは、断熱性能等級における、各種の補助金や住宅ローン金利優遇、税制優遇のメリットについて解説していきます。

ZEH (ゼッチ)

ZEHは、電気やガスなどのエネルギー消費量を抑えつつ、太陽光パネルなどの自家発電設備でエネルギーを生み出し、家庭における年間の消費エネルギーを実質的にゼロ以下にする住宅の概念です。
経済産業省および環境省による戸建ZEH補助事業により、一戸当たり55万円~100万円の補助金が用意されています。

このZEH住宅の前提となる住宅の断熱性能は「等級5」以上となります。
なお、補助金を得るためには「新築住宅を建築・購入する個人」であり、「ZEHビルダー/プランナーが関与(設計・建築または販売)する住宅であること」が共通の条件となります。

「ZEHの補助金」については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

あわせて読みたい!家づくりコラム:「【2022年度】ZEH(ゼッチ)住宅でもらえる補助金制度を徹底解説」

長期優良住宅

2000年に住宅性能表示制度の導入と同時に制定された「長期優良住宅」では、住宅ローン控除の借入限度額の増額や固定資産税の減税期間延長のメリットがあります。
長期優良住宅の認証を受けるためには制度当初の最高等級である断熱性能の「等級4」が必要でしたが、2022年10月より、長期優良住宅の認定にもZEH基準同等の断熱性能の「等級5」が必要となりました。

「長期優良住宅」については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

■あわせて読みたい!家づくりコラム:「長期優良住宅とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説します」

低炭素住宅

低炭素住宅の認定には断熱性能の「等級4」が必須となります。
低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出を抑える施策が備わった建築物です。認定は所管行政庁(都道府県、市又は区)が行います。低炭素住宅に認定されると住宅ローン控除での借入限度額が一般の住宅よりも2,000万円増額され控除額が大きくなり、フラット35の住宅ローン金利が引き下げられるなどのメリットがあります。

「高気密・高断熱住宅」については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

■あわせて読みたい!家づくりコラム:「高気密・高断熱住宅とは?メリットや選び方を姫路の工務店が徹底解説」

断熱性能等級を上げるためのポイント

断熱性能等級を上げるためには、住宅にさまざまな断熱化を施す必要があります。ここからは、断熱性能等級を4以上にするポイントを解説していきます。

①断熱材

①断熱材

住宅の断熱性能を決定付けるのは断熱材です。その種類と断熱性能等級別の推奨仕様についてまとめてみました。

断熱材の種類と使用される部位

断熱材は建物が外気に接する部分すべて(建物表面外皮)に使用する必要があり、対象となる建物の部位は下記になります。

高断熱仕様の住宅で推奨される断熱材の種類と特徴について説明します。

住宅の断熱材として古くから一般的に使用されているグラスウールは、細いガラス繊維が絡み合い構成された綿状の物質です。抱え込んだ空気が移動しにくくなることにより断熱効果を生み出すものです。高性能グラスウールのガラス繊維は通常のグラスウールよりも細く、より空気が動きにくくなるため、高い断熱性能を発揮します。末尾の16Kや20Kの記号は、ガラス繊維の密度を表し、数字が大きいほど断熱性能が高い事を示します。

一般的なグラスルールはビニールパックされたものを仕上げ材の裏に敷き詰めるのに対し、吹込み用グラスウールは現場で天井や壁の裏側にグラスウール繊維を直接ブローイング機械で詰め込みます。断熱部位にコンセントボックスや配管などの凸凹部があっても、隙間なく断熱材を充填することが可能になり、より気密性が増すという特徴があります。

細かい気泡でできた発泡体の断熱材です。耐水性に優れ、板状で適度な硬さをもっているため加工しやすく、グラスウールなどの柔らかい断熱材が経年で垂れ下がり劣化する恐れがあるのに対し、長期間に渡って安定した性能を発揮する特徴があります。

フェノール樹脂を発泡させ、微細な気泡に高断熱ガスを密閉することで高い断熱性能をもつ断熱材です。ポリスチレンフォームより高性能で、薄くても十分な断熱性能を持ち耐火性にも優れています。

断熱材の種類・部位別/性能等級別必要厚さ

部位断熱材仕様例
等級7天井高性能グラスウール20K 210mm
外壁内側:高性能グラスウール20K 105mm+ 外側:フェノールフォーム 100mm
内側:フェノールフォーム 100mm+ 外側:フェノールフォーム 100mm
等級6天井吹込み用グラスウール18K 270mm
外壁内側:高性能グラスウール16K 105mm+ 外側:押出法ポリスチレンフォーム3種 25mm
押出法ポリスチレンフォーム3種 95mm
等級5天井吹込み用グラスウール18K 210mm
外壁高性能グラスウール16K 105mm
内側:高性能グラスウール24K 42mm+外側:高性能グラスウール24K 80mm
等級4天井高性能グラスウール16K 155mm
外壁高性能グラスウール16K 85mm
高性能グラスウール24K 105mm

参照:国土交通省資料 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について

②開口部の断熱

断熱の配慮がされていない一般的なアルミサッシの場合、窓や玄関等の開口部からの熱のロスは建物全体のロスの半分以上を占めると言われています。
天井や壁の断熱性能を上げることは、断熱材の選定と施工の工夫で可能であり、既存住宅の断熱強化も比較的容易ですが、窓や玄関戸の断熱は製品性能がそのまま表れますので、目指す等級に応じたランクのものを十分に吟味し選定する必要があります。

サッシ・ガラスの種類と断熱性能

高断熱仕様の住宅で推奨されるサッシと窓ガラスの種類と特徴について説明します。

アルミ樹脂複合サッシは、外側が耐久性に優れたアルミニウム、内側が断熱性に優れた樹脂で構成されています。外部の熱や冷気を室内に伝えにくくなり、冬場は結露を防ぐ効果もあります。

樹脂製サッシとは、窓の枠が全て樹脂でできている窓です。アルミ樹脂複合サッシよりもさらに優れた断熱性能と気密性能を持ちます。樹脂ならではの部材同士の密着性により、遮音性能に優れていることも特徴です。

ガラスは鉱物のため、それ自体に断熱性能はほぼありません。複層ガラス(ペアガラス)はガラスを2枚向かい合わせに設置し、間に中空層を設けて断熱効果を狙ったものです。A9やG12などの記号が付きますが、Aは空気層、Gはアルゴンなどの封入ガス層を示します。数字は中空層の厚み(mm)で、厚いほど断熱効果は高まります。
ガラスを3枚使用し中空層を2重にしたものが三層複層ガラス(トリプルガラス)です。さらに断熱効果が向上しますが、開閉が重くなるというデメリットもあります。

Low-Eガラスとはガラス表面に金属膜をコーティングしたものです。金属膜の効果で日射熱を吸収あるいは反射し、夏の暑さを和らげ、さらに冬の暖房効率を高める効果があります。

性能等級別の推奨窓仕様

窓仕様例
等級7樹脂製サッシ+ダブルLow-E 三層複層ガラス(G9)
等級6樹脂製サッシ+Low-E複層ガラス(G12)
等級5アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層ガラス(A10)
等級4アルミ樹脂複合サッシ+透明複層ガラス(A9)

参考:国土交通省資料 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について

まとめ

今回は、2022年に新たに等級が追加になった断熱性能等級について解説してきました。
コロナ禍によるサプライチェーンの分断や、ロシアのウクライナ侵攻により電気を始めとするエネルギー価格が高騰を続けています。家計にも大きな負担がかかっていますので、断熱性能を強化し省エネルギーを図ることは今後さらに重要となってきます。

これからマイホームの建築を検討されている方は、工務店やハウスメーカーに新しくなった断熱性能等級についてよく相談することをおすすめします。

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