一戸建て住宅に屋上を設けるメリットは?注意点とメンテナンスのポイントを解説
新築一戸建て住宅では、敷地の広さを最大限に活用するために、屋上を計画するケースが増加傾向です。とくに都市部では、広い敷地面積の確保が難しく、庭の代わりとして屋上が注目を集めています。
この記事では、一戸建て住宅に屋上を設けるメリットやデメリット、後悔しないためのポイントを紹介します。屋上のある生活に憧れている方や、居住スペースを広く取りたい方は、ぜひご一読ください。
一戸建て住宅の屋上とは?
屋上というと、マンションのようなビルを連想される方も多くいます。昔は木造住宅には珍しい設備だったものの、最近では一般住宅の屋根を平らな陸屋根(ろくやね)として屋上にするケースが増えています。
以前の木造住宅に屋上が少なかった理由は、建築条件として広さが10m2(約6畳)以下で、かつ1/50の勾配(5mで10cmの高さの傾き)が必要だったためです。しかし、2008年に「広さの制限が撤廃され、勾配も1/100とする」というように規制緩和がおこなわれました。そのため、現在では比較的容易に屋上のある住宅が建てられるようになっています。
地域によっては、法令で制限が設けられている場合もありますので、一戸建て住宅に屋上を設ける際には事前確認が必要です。屋上つきの住宅を建てたい場合は、土地探しをする際に規制について調べておきましょう。
(参考:e-Gov法令検索「建築基準法」)
屋上と似ている設備
屋上と似た設備として、「ルーフバルコニー」「ベランダ」「バルコニー」「テラス」の4つがあります。それぞれの特徴は異なるため、以下の表で確認してみましょう。
種類 | 特徴 | 屋根の有無 |
屋上 | 屋根の平らな部分 | × |
ルーフバルコニー | 下階の屋根部分 | × |
ベランダ | 2階以上から外側に張り出した部分 | 〇 |
バルコニー | 2階以上から外側に張り出した部分 | × |
テラス | 1階から張り出した部分 | 〇 |
一戸建て住宅の「屋上」と「ルーフバルコニー」は、同じものとして扱われるケースが一般的です。これらの違いを理解しておくと、家づくりの打合せもスムーズに進みます。
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屋上のつくり方は多岐にわたる
一言で「屋上」といっても、形やアクセス方法はさまざまです。ここでは代表的なパターンを4つ紹介しましょう。
屋根の全面が屋上になっている
屋根の全面が屋上になっている場合、ペントハウス(塔屋)を建てるケースが一般的です。建築条件によっては、ペントハウスを建てる位置や屋上の手すりの形状で階数が制限されてしまいます。建築基準法にかかわる問題は素人には判断が難しいため、専門家の意見を参考に検討を進めましょう。
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屋根の一部が屋上になっている
敷地の形状によっては、屋根の一部しか屋上にできない場合もあります。面積は狭くなってしまうものの、コスト面では大幅にカットできて経済的です。予算の都合や太陽光パネルを設置したいという理由で、最初から屋根の一部のみを屋上とするケースもあります。
外階段を使って出入りする
ペントハウスを建てずに、外階段を設置して屋上に出るというのも1つの方法です。屋上に出るにあたって室内を通らないため、ゲストを招きやすいというメリットがあります。ただし、外階段はペントハウスよりも高額な場合が多いので、費用面での検討が必要です。
隣接する居室から出入りする
屋上の位置によっては、隣接する居室から直接出られる仕様にもできます。ルーフバルコニーに近いイメージで、セカンドリビングとしても使用可能です。小さなお子さんがいるご家庭の場合、室内からの見守りもできて便利です。室内と隣接しているため、排水に注意しないと室内に雨水が入ってくる恐れもあるので注意しましょう。
屋上つきの一戸建て住宅を新築するメリット
一戸建て住宅に屋上があると、毎日の暮らしを豊かにしてくれます。新築住宅の屋根を屋上にするメリットを5つ、具体的に紹介しましょう。
眺望が良い
屋上からは周囲が広く見渡せるため、素晴らしい眺望が楽しめます。とくに山や海の近くであれば、美しい景色を独り占めできるでしょう。ベランダからも景観を楽しめますが、屋上のような視界の広がりと解放感は望めません。全方向で自然の空気を感じたい方には、屋上がおすすめです。
洗濯物がよく乾く
屋上は洗濯物を干す場所として理想的で、晴れた日には迅速に乾かせます。室内からベランダの洗濯物を見たくない方や、通行人方からの視線を不安に感じる方も快適に洗濯物を干せます。布団も一度に干せるため、家事の効率を考えても便利です。
庭として楽しめる
屋上は庭の代わりとしても使え、植木鉢やプランターを配置してガーデニングを手軽に楽しめます。テーブルと椅子を用意すれば、外でお茶を飲みながら本を読んだり、友だちを招いたりも可能です。安全面を考慮すれば、子どもたちの遊び場としても使えます。
アウトドアリビングとして活用
ルーフバルコニーのように部屋から直接屋上に出られる場合、アウトドアリビングとしても活用可能です。たとえば、プールを置いて子どもたちを遊ばせたり、愛犬のためのドッグランとして使ったりできます。
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ラグジュアリーな空間を演出
広々とした屋上にジェットバスを設置すれば、リゾート気分を味わえます。バーベキューセットを常備したり、星空を眺めながらお酒を飲んだりもできます。自宅にいながら非日常空間を楽しめるのも、生活感の出にくい屋上ならではの魅力です。
一戸建て住宅に屋上があるデメリット
屋上のある暮らしは生活の質を上げる一方で、注意しなければならない問題もあります。主なデメリットを3つ挙げるので、屋上計画の課題として検討してみましょう。
費用がかかる
一戸建て住宅に屋上をつくるには、以下のような工事が必要であり、通常の屋根よりもコストがかかります。
- 防水工事
- 人が歩いても安全なように構造を補強する工事
- 屋上へのアクセスを可能にするためのペントハウスや階段の設置工事
一般的に、屋根を屋上にするためには追加費用が100〜300万円ほど必要です。床の仕上げにタイルや人工芝、ウッドデッキなどを使用すると、費用はさらに増加します。
掃除が必要
屋上は外に位置しているため、風でゴミや土が飛んできます。腰高ほどの壁に囲まれている仕様が多く、ゴミが溜まりやすい構造です。土や葉っぱ、ホコリなどを放置すると、排水溝が詰まってしまう可能性もあります。雨漏りの原因となるため、安全上の観点からも定期的な掃除が不可欠です。
定期的なメンテナンスが必要
屋上の床を保護している防水塗料や防水シートは経年劣化してしまうため、約10年から15年ごとに表面のコーティングを塗り直す必要があります。通常の屋根材もメンテナンスをおこなうものの、屋上ほど頻度は高くありません。たとえば、瓦屋根では再塗装が不要ですし、ガルバリウム鋼板の屋根ならば20年ほど持ちます。
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一戸建て住宅の屋上設置に後悔した事例と考察
一戸建て住宅に屋上を設けるメリットやデメリットを理解したつもりでも、実際に生活してみないとわからない問題もあります。屋上を設けて後悔したと考える人の事例を紹介しますので、失敗を避けるためのポイントを学びましょう
プライバシーが減ってしまった
屋上の魅力の1つは、プライベートな空間を確保できるという点です。しかし、入居後に近所に家が建った場合は、プライバシーが減少してしまいます。以下の3つは、できなくなったことの代表例です。
- 喫煙スペースとして利用していたが、隣家への影響を気にして使えなくなった
- バーベキューを楽しもうと思っていても、煙やにおいが気になってしまう
- 隣家が3階建てで、2階の屋上が丸見えになるので落ち着いて過ごせなくなった
家が密集している地帯ほど、周りの状況に注意や配慮が必要となります。建築後の不安に関しては、周辺環境や今後の動向についてアドバイスしてもらえる地域密着型の工務店に相談するのがおすすめです。
洗濯物を干すのが不便で面倒に感じた
直射日光が当たる屋上は洗濯物を速く乾かせて便利なものの、庇(ひさし)がありません。雨が降り出すとすぐに洗濯物が濡れてしまい、天気が不安定な日には安心して干せないというのが課題です。屋上にペントハウスがあれば室内に洗濯物を取り込めますが、外階段で出入りする場合は時間がかかってしまいます。
また、洗濯物が多いご家庭では、洗濯のために何度も階段を往復するのが大変だったという声もあります。たとえば、乾燥器を活用したり、ランドリールームを設けたりして室内でも洗濯物を乾かせるようにしておくのも1つのアイデアです。
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上手に活用できずメンテナンスコストが痛手となった
屋上生活に憧れていたものの、実際に活用する機会が年に数回しかないという後悔もあります。バーベキューやランチパーティーなどを計画していたのに、準備や後片付けが想像以上に大変だったというのが主な理由です。シンクや収納スペースを設けるなどして、屋上ですべての作業が完結できるようにしておくと手間が省けます。
屋上は定期的なメンテナスが必要なため、活用頻度が下がるほど維持費が負担に感じられるようです。設置の際は目的を明確にし、快適に使用できる工夫も忘れずにおこないましょう。
一戸建て住宅に屋上をつくる際の注意点
一戸建て住宅に屋上を設けるにあたって、後悔しないためにはいくつかの点に留意する必要があります。設計段階で注意したいポイントについて解説します。お住まいの地域や家族構成と照らし合わせてみましょう。
屋上への動線を考慮する
屋上へのアクセスがスムーズでないと、利用の機会が限られてしまいます。おすすめなのは、リビングから直接屋上に出られる動線です。ゲストも招きやすく、洗い物や洗濯物の出し入れもスムーズにおこなえます。
小さなお子さんがいるご家庭では、安全面も十分考慮しましょう。お子さんがひとりで屋上に出てしまうと事故につながる恐れもあります。
大雨や大雪に備える
大雨や大雪に関しては、建築基準法に則って建てられた家であれば問題はありません。ただし、排水や雪かきのしやすさなどは、設計段階での工夫が必要です。地元の工務店は地域の気候にもくわしいので、実例を元にアイデアを提案してもらえます。不明な点があれば、気軽に相談してみましょう。
安全対策をしっかりとおこなう
建築基準法によれば、2階以上の階に位置するバルコニーには、柵や手すりが必要とされています。
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
(引用:e-Gov法令検索「建築基準法施行令第百二十六条」)
大人であれば心配のない高さですが、お子さんの場合は1.1mの手すりでは安全が確保できません。たとえば、テーブルや椅子に乗って身を乗り出した際に転落してしまう危険性があります。お子さんの事故を防ぐためには、フェンスではなく壁で囲むなどの対策が必要です。
一戸建て住宅の屋上を依頼する施工会社選びのポイント
新築一戸建てに屋上を設ける際は、施工会社選びが重要なポイントとなります。信頼できるかどうかを見極める3つのポイントを解説しましょう。
屋上の施工実績が豊富
木造住宅の場合、屋上に置くものの重さによっては建物に大きな負担がかかる可能性もあります。そのため、頑丈な建物を設計し、丁寧な工事が不可欠です。排水や防水対策も必要なので、屋上の施工実績が豊富な工務店をおすすめします。
相談に対して親身に対応してくれる
屋上の活用方法は多岐にわたるため、お客様からの要望もさまざまです。話をじっくり聞いてくれるのは大前提として、深い知識と経験から的確な対応が望めるかどうかを判断します。具体的な希望を伝え、真摯に提案してくれる業者を選びましょう。
アフターフォローが充実している
屋上は定期的なメンテナンスが必要なため、アフターフォローが重要です。建物の引き渡し後も、定期点検のようなサポートを受けられるかどうかを確認します。提供されるサービスがあれば内容について理解しておくと、いざというときに慌てず安心です。
まとめ
一戸建て住宅の屋根を屋上にすると、バーベキューやガーデニングを楽しんだり、アウトドアリビングとして活用したりできます。休日の過ごし方にバリエーションが増え、自宅で気軽に気分転換が可能です。しかし、建築費や定期的なメンテナンスには費用がかかるため、使用頻度によっては負担がかかる可能性もあります。「どのように活用したいのか」という点を十分に考慮し、後悔のない選択をしましょう。