高気密高断熱住宅8つのメリットと注文住宅新築の際に注意すべきポイントを解説
高気密高断熱住宅で子どもを見守る夫婦

家づくりコラム

高気密高断熱住宅8つのメリットと注文住宅新築の際に注意すべきポイントを解説

高気密高断熱住宅で子どもを見守る夫婦

注文住宅を建てるにあたって、気密性と断熱性は非常に重要なポイントです。高気密高断熱住宅は、外気温が室温に影響を与えにくい特徴があります。冷暖房も効きやすく、光熱費の削減につながると多くの人に人気です。ただし、高気密高断熱の住宅を建てる際は注意すべき点もあります。

この記事では、高気密高断熱住宅のメリットと新築時に注意すべきポイントについてくわしく解説します。理想の家を作りたい方やマイホームの設計に後悔したくない方は、最後までお読みください。

高気密高断熱住宅と通常住宅の違い

高気密高断熱住宅と通常住宅の違いを比べる

高気密高断熱住宅と通常住宅を比べると、気密性と断熱性に大きな違いがあります。高気密高断熱住宅は、室内の空気を外に逃がさないのが特徴です。冷暖房の冷気や暖気が外に逃げにくいため、電気代の節約にもつながります。ただし、健康や安全面を考慮すべき点もあるので、いくつか例を挙げて紹介しましょう。

高気密高断熱住宅は室内の空気を閉じ込める能力が高い分、空気を綺麗に保つ必要があります。換気システムを整備すれば解消できる問題なので、省エネで快適な暮らしが実現できる住宅です。

高気密高断熱住宅のメリット8つ

高気密高断熱住宅の床に寝転ぶ家族

高気密高断熱住宅には多くのメリットがあり、整理しておくと注文住宅を検討する際に役立ちます。8つの代表的なメリットを紹介しますので、ハウスメーカーや工務店選びの参考にしてみてください。

一年中快適な温度

高気密高断熱住宅は、一年中快適な室温を維持できるメリットがあります。天候や外気温が室内に影響を与えにくく、屋内の空気を外に逃がさない構造のためです。真夏でも帰宅時に蒸し風呂のような熱さを感じず、冬も寒すぎて厚手の靴下を重ね履きしなくて済みます。異常気象が多く見受けられるようになりましたが、高気密高断熱住宅を選べば快適な生活が手に入るでしょう。

光熱費の節約と省エネ

高気密高断熱住宅では、光熱費節約だけでなく、省エネ生活も可能になるというメリットがあります。気密性の高さから、エアコンや冷暖房器具を効率的に使えるためです。夏は涼しく、冬は暖かいため、家全体の消費エネルギーを削減可能です。快適な温度を保てる上に、電気代をはじめとした光熱費を削減できます。光熱費の支払いは何十年にも渡るので、将来的には大きな節約になるでしょう。

ヒートショックから身を守る

ヒートショックは、急激な温度変化が血圧や脈拍に悪影響を及ぼし、心臓発作や脳梗塞のリスクを高める現象です。高齢の人たちに多いとされているものの、若い世代でも注意が必要とされています。冬の寒い時期に、暖かいリビングから浴室へ移動した際に発生するケースが目立つのも特徴です。高気密高断熱住宅では、家全体の温度を一定に保てるので急激な温度の変化から身を守れます。

音が静かで快適

高気密高断熱住宅は遮音性の高さも魅力で、騒音を遮るのに適しています。気密性の高い住宅は壁に隙間がないため、音を遮断しやすい構造となっているためです。外からの音を遮るだけでなく、室内の音が外に漏れにくい特徴もあります。お子さんが自由にのびのびと家で遊べるのは大きなメリットです。また、騒音が気になる地域に注文住宅を建てても、音へのストレスを軽減できます。

室内の空気を清潔に保つ

快適で健康的な生活を実現するために、2003年7月1日に改正建築基準法が施行されました。室内の化学物質が原因で起こるシックハウス症候群を予防するための措置です。健康への悪影響を減少させるため、建築に使用される材料や換気設備に関する制約が盛り込まれています。最新の新築住宅には「24時間換気システム」が組み込まれ、気密性が高いほど室内の空気をより効率的に入れ替える仕組みです。高気密住宅には、シックハウスやハウスダストによる健康被害を減らすメリットがあります。

(参考:国土交通省「改正建築基準法」)

湿気や結露のリスクが軽減

室内と外気温の差が大きいほど、結露の原因となる水滴が出やすくなります。高気密高断熱住宅では、室内の温度が外の気温にあまり影響を受けないのがメリットです。湿気による水滴が出にくいため、結露のリスクが通常住宅に比べて多くありません。結露はダニやカビの増殖を促進し、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。建物にも損傷を与える原因となるので、注文住宅での結露対策は非常に重要です。24時間換気システムがあれば適切な換気ができ、湿度の調整にも役立ちます。

住宅ローン減税が受けられる

住宅ローンを利用して注文住宅を購入すると、年末までに残っているローンの0.7%分が所得税から控除されます。「住宅ローン減税」という制度で、控除は最大で13年間続くのがメリットです。しかし、2024年1月以降は省エネルギー住宅の基準を満たしていないと住宅ローン減税は適用されません。省エネルギー住宅の基準には気密性と断熱性についての項目もあり、これから注文住宅を建てる人にとっては非常に重要なポイントとなります。

(参考:国土交通省「住宅ローン減税」)

住宅ローン減税を受けるためには条件があるので、くわしくは下記の記事を参考にしてください。

【関連記事】
【省エネ基準】2024年最新の住宅ローンの種類と住宅ローン控除を徹底解説

地球温暖化の防止に貢献

日本では、ほとんどの電力が石炭や天然ガスを使った発電に依存しています。石炭や天然ガスを利用した発電方法では、多量の二酸化炭素が大気中に放出されてしまうのが問題です。地球温暖化を進行させる原因ともなるため、世界中でCO2の排出量を減らす取り組みが行われています。高気密高断熱住宅は消費電力を減らせるため、地球温暖化の防止にも貢献できるのがメリットです。注文住宅の設計にあたって、子どもたちの未来や環境を守る視点も大切にしましょう。

(参考:資源エネルギー庁「第2節 日本の経済・社会に与える影響」)

高気密・高断熱住宅の建築費用は通常の住宅と比べて高い?

高気密高断熱住宅費用イメージ

高気密高断熱住宅は性能が高いため、通常の住宅と比べて初期費用は高くなる傾向があります。断熱材や窓ガラス、サッシなどの費用が追加されるためです。しかし、将来を見越すと、総費用に大きな違いが出ない場合もあります。電気代やガス代などのランニングコストも考えると、導入を検討する価値は十分といえるでしょう。

初期費用と住宅ローン

注文住宅を建てる際、高気密高断熱住宅の初期費用は高くなる傾向があるとお伝えしました。通常住宅との差は性能によって異なるものの、以下のように仮定します。

同じ年収と条件で35年間の住宅ローンを組む場合、毎月の返済額は次の通りです。

(フラット35「借入希望金額から返済額を計算」で試算)

毎月1.6万円の差なので、年間19万円程の出費となります。数字だけを見ると、家計への負担が大きく感じられるかもしれませんが、お伝えした通り高気密高断熱の家は住宅ローン減税の対象となる住宅です。たとえば、ローン残高が3,000万円だった場合、21万円が還付可能となります。こうした優遇制度の利用も踏まえて、検討を進めていきましょう。

毎月の光熱費

初期費用と住宅ローンの次は、毎月の光熱費についてです。国土交通省によると、2025年からは現在の省エネ住宅が新築住宅の最低基準となります。2030年にはZEH水準の住宅が最低ラインとされる予定です。

現在の省エネ住宅とZEH水準の住宅を比べた場合、東京23区のような大都市の光熱費は以下のようになります。

現在の省エネ住宅年 277,000円
ZEH水準の住宅年 224,000円

年間でおよそ5,3000円も節約できるだけじゃなく、健康にもいい影響があると全国調査で判明しました。喘息の子どもの症状が半分に減少し、入浴時の事故が起こるリスクも下がります。

さらに、新築住宅に太陽光パネルを導入すると、光熱費が年間で約40,000円も節約可能です。現在の省エネ住宅とZEH水準の住宅の比較でも年間で約53,000円もの差が生じるとなると、通常住宅との差はより大きくなるでしょう。

(出典:国土交通省「家選びの基準が変わります」)
(出典:国土交通省「省エネ住宅で節約できる年間の光熱費」)
(出典:国土交通省「年間の光熱費も節約できる!|経済的にオトクに!」)

将来の修理費用

一戸建て住宅は時間の経過とともに、メンテナンスが必要となります。修理の内容は状況によるものの、建物の主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根)の損失を防ぐのが重要なポイントです。主要構造部が傷む主な原因は湿気で、結露は柱や梁の劣化や断熱材の損傷を引き起こしやすくします。

高気密高断熱住宅は通常の住宅に比べて結露が少なく、効率的な換気を行えるのがメリットです。優れた断熱材や高性能な窓が使用されているため、柱や床が劣化するリスクは低いのも魅力です。その結果、通常住宅と比べて修理費用を大幅に削減できます。

総合的には高気密高断熱住宅のほうがお得

高気密高断熱住宅は通常の住宅と比べて初期費用がかかるものの、長期的に見れば総費用は同じか、より安くなる可能性もあります。経済的に節約できるだけでなく、健康にも良い影響を与えるのが注目すべき点です。注文住宅を設計する際は、長い間快適に住める家を選ぶと家族でしあわせに暮らせます。

注意したいのは、性能が十分でないと光熱費や修繕費の節約につながらない点です。気密性や断熱性は数字で評価できるため、「高気密高断熱住宅の基準とは?家を建てる前に知っておきたいポイントと省エネ住宅の将来」を参考にしてみましょう。疑問や不明な点は、住宅会社や工務店の担当者に相談するのもおすすめです。

高気密高断熱住宅を建てる際に注意すべきポイント

建設中の高気密高断熱住宅

高気密高断熱住宅を建てるにあたって、注意すべき点がいくつかあります。高気密・高断熱のメリットを最大限に活かすためのポイントを3つ紹介しましょう。

換気システムは第1種換気方式を選ぶ

住宅の換気システムには「第1種換気」「第2種換気」「第3種換気」という3つの種類があります。高気密高断熱な家には、換気扇を使って室内の空気を強制的に入れ替える「第1種換気方式」による24時間換気が最適です。機械でコントロールできるため、窓を閉めたままでも少しずつ新鮮な空気を取り入れられます。シックハウス症候群の予防にもつながるので、気密性が高い家ほど第1種換気方式をおすすめします。

気密性は専用の測定器で測る

高気密な家を実現するためには、気密性(C値)の測定が重要です。高気密住宅には明確な定義がなく、住宅メーカーによって基準の数値が異なります。住宅の建て方によっても気密性は異なってくるため、モデルハウスの数値は参考程度にしましょう。建設後の全棟で気密性の測定を行ってからお客様に引き渡している住宅会社や工務店は、信頼できる業者として判断できます。

ZEH水準に対応可能な業者を選ぶ

経済産業省はZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)を広めるために注力しており、2020年には新築住宅の約56%がZEH水準の住宅でした。2023年以降、ZEH水準住宅が新築の最低基準となるため、ZEH水準以上の住宅が建てられる業者は頼りになるでしょう。

家の断熱性能で見ると、ZEH水準住宅のUA値は0.60です。より断熱性の高い住宅として

日本での最高水準はUA値0.26となります。ハウスメーカーや工務店の公式サイトやパンフレットを見て、建設実績を確認するのもおすすめです。

(参考:資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」)

まとめ

高気密高断熱住宅のメリットは、天気や気温に影響されずに室内の温度を一定に保てる点です。暖房や冷房がより効率的に運転でき、エネルギーの節約や光熱費の削減に役立ちます。初期費用は通常の住宅と比べて高いものの、長期的に見ると光熱費を削減できて経済的です。気密性と断熱性の性能が高くないと、経済的なメリットは少なくなるため注意しましょう。注文住宅の新築を計画する際は、気密性や断熱性を数値で明確に表示している住宅会社や工務店を選ぶと安心です。

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