ガルバリウム鋼板の特徴とは?屋根に使うメリット・デメリットとメンテナンス方法を解説
ガルバリウム鋼板は、耐久性やデザイン性に優れた屋根材として人気を集めています。軽くて錆に強い性質から、注文住宅で採用する人も増加傾向です。しかし、メリットが多い一方で、断熱性や遮音性などにおいて注意すべき点もあります。この記事では、ガルバリウム鋼板の特徴や、屋根に使用するメリット・デメリット、長持ちさせるためのメンテナンス方法について解説します。快適で安心できる家づくりを目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
ガルバリウム鋼板とは?
ガルバリウム鋼板(またはガルバリュウム鋼板)は、1970年代にアメリカで開発されました。アルミニウムと亜鉛の合金でコーティングされた鋼板を指し、日本では「ガルバ」と呼ばれる場合もあります。国内での生産は1980年代からはじまり、製造しているメーカーの数も豊富です。
日本工業規格(JIS)では「G3321」という規格で登録されており、規格名称は「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板」として定められています。(参考:JISC 日本産業標準調査会「JIS検索」)
つまり、ガルバリウム鋼板の屋根とは、鉄板にアルミニウムや亜鉛のコーティングを施した金属製の屋根のことです。耐久性や熱に強く、見た目がおしゃれなので、注文住宅でも人気があります。
他の屋根材の比較については以下の記事をご覧ください。
屋根の形状7つの特徴とメリット・デメリットを知ってから住宅デザインを決めよう
ガルバリウム鋼板屋根の種類と特徴
ガルバリウム鋼板の屋根とは、「ガルバリウム」と呼ばれる金属でコーティングされた鉄の屋根材とお伝えしました。ここからは、ガルバリウム鋼板屋根の種類について説明します。
住宅の屋根に使われるガルバリウム鋼板には主に3つの種類があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
横葺き
横葺きは昔から使われている方法で、屋根に対して横向きに取りつけます。横葺きは、屋根の傾きが約14.0度以上必要となるのが特徴です。勾配の緩やかな屋根には使えないため、家のデザインが限られてしまいます。また、断熱材のついていないタイプもあるので、省エネ性能の高い注文住宅を検討中の方は注意が必要です。
縦葺き
縦葺きは、屋根全体に対して縦向きに取りつけます。横葺きとは異なり、14.0度以下の勾配の屋根にも使えるのが特徴です。「心木あり瓦棒葺き」と「心木なし瓦棒葺き」の2種類があり、「心木あり瓦棒葺き」は、金属板の中に木材が入っています。「心木なし瓦棒葺き」は、中に木材が入っていない金属屋根です。耐久性の良さからも、最近では「心木なし」が人気となっています。
瓦調葺き
瓦調葺きは、横葺きと同様に横向きに屋根材を取りつけます。見た目が瓦屋根に似ている材料を使うため、瓦の重厚感や雰囲気が好きな人におすすめです。瓦屋根のデメリットである重さや耐震性の低さを気にせずに、瓦屋根のような見た目を楽しめます。ただし、本物の瓦屋根は塗装が必要ないのに対し、瓦調葺きは定期的な塗り直しのメンテナンスが必要です。
ガルバリウム鋼板の5つのメリット
ガルバリウム鋼板には主に5つのメリットがあり、注文住宅の屋根としても人気があります。それぞれのメリットについて理解すれば、ガルバリウム鋼板がバランスのとれた建材だとわかるでしょう。
メリット1:長持ちする
ガルバリウム鋼板の寿命は20~30年以上とされ、定期的にメンテナンスをすると40年以上使える場合もあります。同じ金属のトタン屋根の寿命は10~20年とされているため、ガルバリウム鋼板のほうが耐久性に優れた素材です。ただし、長持ちさせるためには定期的なメンテナンスが必要となり、15年に1回程度のペースでメンテナンスを行うと良いでしょう。
メリット2:錆に強い
ガルバリウム鋼板は、金属の建材の中でもとくに錆に強い特徴があります。金属は錆やすいイメージがあり、屋根に用いるのを躊躇されるかもしれません。しかし、ガルバリウムはトタンやアルミよりも錆に強い建材です。錆は見た目も悪くなるので、注文住宅の屋根や外壁を選ぶ際は注意しましょう。
メリット3:地震に強い
ガルバリウム鋼板は非常に軽い素材のため、地震に強い建材です。屋根が重いと建物の重心が高くなり、地震のときに揺れが大きくなります。地震時に建物にかかる力は「建物の重さ×地震の加速度」で決まるため、建物が重いほど大きな力がかかるためです。建築基準法で軽い屋根に分類されるストレートよりも、1/3程度の重さしかないので耐震性を気にする方におすすめします。
メリット4:おしゃれでデザイン性が高い
ガルバリウム鋼板は、金属の質感を活かしたスタイリッシュでおしゃれな印象が特徴です。色の種類も豊富で、濃い色から鮮やかな色まで家のデザインに合った色を選べます。ガルバリウム鋼板の独特な雰囲気に魅力を感じる人も多く、木材を組み合わせて個性的なデザインの仕上がりを楽しむこともできます。
メリット5:ひび割れしにくい
ガルバリウム鋼板は、ひび割れが起きにくいのも強みです。建材のひび割れは、主に大きな地震や寒い地域での凍結が原因で引き起こされます。瓦やスレート、モルタルなどの建材は、経年劣化によるひび割れが生じるというのがデメリットです。しかし、ガルバリウム鋼板は金属なので、ひび割れの心配をせずに済みます。
ガルバリウム鋼板のデメリットと注意点
ガルバリウム鋼板はメリットが多い屋根材な一方で、入居後に「失敗した」と後悔する声も少なくありません。具体的には以下のようなデメリットを感じるケースが多く、事前に対処できる問題ばかりです。納得のいく注文住宅を建てるためにも、後悔しやすいポイントについて見てみましょう。
断熱性が低い
ガルバリウム鋼板屋根の断熱性が低い理由として、以下の3つが挙げられます。
- 熱の伝導率が高い
- 薄い
- 空気の層がない
家の住み心地としては、夏は暑く、冬は寒くなりやすいのが問題です。快適な家にするためには、次のポイントを押さえて建材を選ぶのがおすすめです。
- 断熱材が入っているものを選ぶ
- 遮熱塗料を使う
- 空気の層がある屋根を選ぶ
屋根は家の断熱性に直結するため、省エネ住宅を得意とするハウスメーカーや工務店に相談すると良いでしょう。
アルカリ性に弱い
ガルバリウム鋼板の屋根は、以下の理由からアルカリ性に弱い性質です。
- 錆びを防ぐコーティングがダメージを受けやすい
- 表面をきれいに保つ塗装が劣化しやすい
具体的に影響を受けやすいものには、以下の3つがあります。
- 海風
- 鳥のフン
- 落ち葉
通常の落ち葉は弱酸性ですが、雨で濡れるとアルカリ性になる場合があるので注意が必要です。庭に植樹したり、木に囲まれた環境に家を建てたりする予定があれば慎重に検討しましょう。
また、屋根の点検は高所で行うため、一般の人には危険な行為です。安全に点検してもらうためにも、メンテナンスは専門家に頼むことをおすすめします。
雨音が響きやすい
ガルバリウム鋼板屋根は、次の理由で雨音が響きやすいというのも後悔の原因です。
- 音を遮る効果が少ない
- 薄いため音が通りやすい
- 空気の層が少ないため、音が反響しやすい
「雨の日には音が気になる」「夜に雨音がうるさくて眠れない」という可能性もあります。次のような対策が施されたガルバリウム鋼板屋根を選べば、雨の日のストレスも軽減可能です。
- 遮音材が入っている屋根
- 空気の層がある屋根
注文住宅の良さは、家の間取りやライフスタイルを考慮できる点にあります。屋根材は適切に選び、雨音を抑えて快適な室内環境に仕上げましょう。
施工が不十分だと雨漏りする
ガルバリウム鋼板の屋根は、施工には高い技術が必要です。施工が不十分だと次のようなトラブルが生じ、雨漏りしやすくなります。
- 屋根の取りつけがしっかりしていない
- 防水処理が適切にされていない
- 安い材料を使ったために劣化しやすい
雨漏りによって家の木材が腐ってしまうと、建物の劣化が進んでしまう原因です。修理費がかかり、住宅ローンの支払いに影響を及ぼす恐れもあります。屋根だけでなく、家づくりは信頼できる業者に依頼しましょう。
ガルバリウム鋼板屋根のメンテナンス時期と方法
ガルバリウム鋼板屋根には、定期的な点検や掃除、そして修理といったメンテナンスが必要です。それぞれのタイミングやサインは家の立地条件や天候によっても異なります。素人には作業が難しい場所なので、ハウスメーカーや工務店のアフターサービスの充実度も確認しておきましょう。
ガルバリウム鋼板をメンテナンスするタイミング
ガルバリウム鋼板を長持ちさせるためには、適切なタイミングでメンテナンスを行うことが大切です。具体的な時期やメンテナンスが必要な状態について解説します。ただし、家の立地条件や天候によっても劣化の速度は変わるため、くわしくは注文住宅を依頼する業者に確認しましょう。
15~20年を目安にメンテナンス
ガルバリウム鋼板のメンテナンスは、「15年~20年」が1つの目安です。一般的な環境下での耐久性を考慮した数字のため、強風や大雨の被害に遭った場合は早めにメンテナンスが必要となります。屋根は損傷がわかりにくい部分なので、定期的に点検をして早めに問題を見つけることが大切です。定期点検は5年に1回のペースで専門業者にお願いすると、大きなトラブルになる前に対処できます。
修繕が必要な劣化のサインが出たら耐用年数に関係なく対処
ガルバリウム鋼板のメンテナンスのタイミングを考えるときは、年数だけでなく屋根の状態も重要です。以下のような様子が見られたら、早急に対処しましょう。
- コケ:日当たりが悪く、傾斜が緩い場所ではコケが生えやすくなります。放っておくと錆の原因になるので、早めに水洗いで取り除きましょう。
- チョーキング(色あせ):色あせが起こると、指で触れると白い粉がつく状態となります。放置しておくと錆が発生しやすくなるので、塗装メンテナンスを行いましょう。
- 錆:ガルバリウム鋼板の端や曲がった部分、傷があるところは錆やすくなります。最初は白い錆(白錆)ができ、放置すると赤い錆に変化するのが特徴です。
ガルバリウム鋼板の4つのメンテナンス方法
ガルバリウム鋼板のメンテナンス方法は、大きく分けて4つあります。屋根の状態に合わせて、適した方法を選ぶことが大切です。ここでは、それぞれのメンテナンス内容を紹介しましょう。
水で洗い流す
ガルバリウム鋼板は、塩分やほこりがたまると錆が発生しやすくなります。定期的に水洗いすると長持ちするため、水で屋根の汚れを流しましょう。鳥のフンがついたままにすると錆が出やすいので、見つけたら早めに洗い流すことも大切です。屋根の水洗いは高い場所での作業になるため、業者への依頼をおすすめします。
塗り替え
ガルバリウム鋼板の屋根にコケや色あせ、錆が目立ってきたら、塗り替えが効果的です。錆が発生している時点で、表面だけでなく中のメッキも劣化している可能性があります。早めにメンテナンスを行わないと、損傷が激しくなってしまうので注意が必要です。塗り替え費用は屋根の面積や業者によっても異なるため、注文住宅を新築する際に確認しておきましょう。
カバー工法
ガルバリウム鋼板の屋根に錆が広がったり、雨漏りが起きたりしている場合には、カバー工法でのメンテナンスを行います。カバー工法には、今ある屋根の上に新しい屋根材をかぶせる方法と、新しい下地を設置してからガルバリウム鋼板を取りつける方法があります。塗り替えよりも費用はかかるものの、長い目で見るとコストパフォーマンスが良いメンテナンス面テンス方法です。
葺き替え
葺き替えとは、今ある屋根材を取り外して新しい屋根材に交換する工事です。ガルバリウム鋼板の屋根が激しく傷んでいる場合におすすめの面テンス方法で、下地となる部分が劣化している際は葺き替えが推奨されます。費用は100万円を超える可能性が高いので、定期点検をこまめに行いカバー工法でメンテナンスできるようにしておくと良いでしょう。
まとめ
ガルバリウム鋼板は、耐久性やデザイン性、耐震性に優れています。注文住宅の屋根材としてもおすすめで、シェア率がトップとされるほど人気です。しかし、断熱性や遮音性を考慮して選ばないと、冷暖房の効率が悪くなったり、雨音が気になったりしてしまいます。済み後ことの良い注文住宅を建てたい方は、省エネ性能の高い家づくりを得意とするハウスメーカーや工務店を選びましょう。